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ライトノベル

美味しいごはんとあやかしと👹『かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。』

かくりよの宿飯 感想

友麻碧・著『かくりよの宿飯 あやかしお宿に嫁入りします。』KADOKAWA 富士見L文庫

大人気のかくりよの宿飯シリーズ、最初の物語です。

<あらすじ> 幼い頃からあやかしが視える女子大生の葵は、ひと月前に亡くなった祖父の遺品の中に、奇妙な写真を見つける。この世のものではないような雰囲気の男達に囲まれて祖父が写っている。裏にはいわくありげな殴り書き。その意味もわからないまま、いつものように学校に行く途中の古い神社の階段で、その『鬼』に出会った。

おじいちゃんの津場木史郎というキャラがはちゃめちゃで面白いです。

葬式に集う人々がひきもきらず、言い合う悪口から宴会になってしまうほど人に恨まれ、愛されていた史郎。そんな彼は生きながら隠世(かくりよ:あの世、黄泉 のことですが、この小説の中では現世と黄泉ともちがう、あやかしたちの生活している空間のこと)と現世(うつしよ:この世)を行き来することのできる類まれな人間だった。ダイナミックで根無し草のような半生を送り、葵という孫娘を引き取るまであちこちの現地妻にこどもを作りながら独身を貫いた男。

と、まとめてはみたけれど、なかなかに謎の多い人です。

写真は思った通り隠世で撮られたもので、裏の殴り書きは借金のカタに、写真にあった建物(宿屋)の主人・鬼神の大旦那様の花嫁として葵を差し出す、という意味だったらしい。

大旦那様と出会いのシーンが好きです。

最初に大旦那様はおなかを空かせたあやかしを演じて葵からお弁当(美味しそう)をもらうのですが、「いただきます」と手を合わせて言うのがなんか、物静かで品の良い感じがして、なんだかそれだけで好きになってしまいました。(ちょろい)

「美味しいよ、葵」って落ち着いた声で呟くのもなんかよくないですか。。

だからこの後の大旦那様の態度も、こっちが地だろうな、と勝手に思って落ち着いて読めます。

大旦那様が元来は品の良いウェットな性格だとしたら、葵はシャキシャキした負けん気の強い性格です。

それはおじいちゃんの影響はもちろんおおいにあるとしても、葵の幼い日の記憶に起因しているのかも・・・?

 

 

すこしだけネタバレになってしまいますが、葵はおじいちゃんに引き取られる前のごく幼い頃に、食べるものがなく死にかけるところまでいきました。

まだ世の中を知る前の、そういう境遇以外の道を自分で切り開けると考えつく前のこどもの時に、食べるものがなく自分はそれを耐えているしかないとしたら。

たぶんひとは、『生きたい』と強く思うだろう、と思うのです。

親を恨んだり社会を恨んだり、拗ねたり。そういう社会性(つまりどれも自分の世界に他人がいると認識できてはじめて生じる感情だろうと思う)がないほど幼いこどもなら、ただ純粋に『生きたい』って願うものじゃないか。。

その強烈な思いが、さみしさが、葵の性格を作ったんじゃないかと想像します。

そしてそのことがあるから、葵はお腹をすかせたあやかしに弱い。

この出来事はこのシリーズの根幹にずっと関わってくるエピソードなのでこれ以上は書けないのですが、いろいろな目に遭いながら、それでもおじいちゃんやあやかしたちを憎めずにいるのはどうしてなのか、すごく理解できるのです。

 

 

さて、鬼神である大旦那様に嫁になれと居丈高に言われても、働いて借金を返すから断る、という葵ですが、当然のごとく、お宿には葵を受け入れてくれる場所はなく。流れ流れてたどり着いた目立たない茶屋のような場所で、葵は腕をふるって行くことになります。

葵が料理を作ってくれるから、ここからまたぐんと楽しくなってくるのです。

隠世の家電(電気じゃないけど!)も『へえ〜〜』ってなる面白グッズがいっぱいで飽きません。しかも、現世のものよりエコだし便利そう。。

最初に出てくる冷蔵庫なんて、氷柱女の氷だけで温度調節も保冷もできるんだから、ほかになんのエネルギーに使ってないもんね。。しかも、他に替わるものがないから、氷柱女のこの世界での存在意義も保持されて、、、 なんかちょっと羨ましい仕組みかも。

最初はやさしそうだった大旦那様も冷たい感じだし、宿の従業員には嫌われている(なにしろあの史郎の孫だから)けれど、ただひとり、九尾の狐・若旦那の銀次さんだけは最初からやさしくて親切です。彼の存在と葵のたくましい性格のおかげで、けっこう呑気な気分で読み進めていけます。茶屋も銀次さんの管轄だったので、最終的にはその場所に住み込んでお店を開いたりできたのでした。

そしてその段取りをつけようとするところから、けっこう盛りだくさんな感じでたくさんの出来事が起こって行く第1巻。

天狗の松葉様とのエピソードにはほっこりします。頑固なお年寄りのOKサインを読み取る葵。ちょこちょこ出てくるこういうさりげない処世術みたいなものもこのシリーズの味わい深さです。食事処を開くと良い、と言われた時にも、家庭で振る舞うのとお金をもらって作るのとの厳しい違いを意識している葵がなんかいいなって思いました。

雪女のお涼、狸の春日、土蜘蛛の兄弟。みんな個性的で、キャラに奥行きと愛着を感じます。

そして最後の方で、それとは知らされずにもらっていた贈り物のことを、土蜘蛛の暁から聞くのです。。

この巻では謎の多い大旦那様と銀次さんはけっこうふわふわとした存在。。大旦那様に至っては、いま現在も謎が多く、つかみどころがないような。8巻ではほとんど出てもこないし。・・・でもなんか可愛いんですよね。こまったものです。

たくさんの特産品や名物が出てくるのも楽しいです。今回は、お宿の饅頭、もつ鍋、さくらんぼジュース、豆大福、くらいかな。隠世ってけっこう現世と似ているけどすこしだけ違っていて、それをどんなあやかしがどんなふうに作っているのか、という部分を読むのもとっても楽しいです。

最後に、現世に戻るのか、隠世にふたたび来るのかを葵の意思で自由にさせた大旦那様には痺れました。何食わぬ顔で待ってるし。。。もうっ。

つまり、葵は自分の意思でまた隠世に戻ってくる。

そうしてこの隠世で鬼の許嫁として食事処を営む葵の物語は、続いて行くのです。

なお、マスコットキャラである手毬河童のチビがやっと隠世についてきたので、次巻からは、たまにイラつきながらもあざと可愛さで和ませてくれますよ〜。

アニメやコミックスにもなってます。アニメの方はチビがほとんど出てこなくて残念。他にも全体にざっくりしすぎていたので、やっぱり原作のこの濃さが好きだなと思いました。でも、大旦那様の声が小西さんなのでドラマCDとかで忠実にやってくれたらなーと思うのです。。。もちろんジャケットはLaruhaさんで・・・♡

かくりよの宿飯

 

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