パンが好きです。
鳥野先生の『手紙物語』を読んで面白かったので、しかもパンの話だったので、うれしくて迷わず購入しました。
この本を読むと、あの焼きたてのしあわせな匂いがしてくるような気がして、なんどもなんども読み返しては、鼻をヒクヒクさせているのです。。ほんとうに美味しそう。。
表紙のイラストも全部好きだし、マンガの中の絵も、好きな表情がたくさんあります。眠る前に読むマンガのリストにずっと入っています。
鳥野しの・著『麦の惑星』全3巻
このお話はすこし不思議です。
あらすじは…
とある人気登山道沿い(なのかな)にある古民家は『ほたるベーカリー』というパン屋さん。おじいさんの跡を継いだ店主の紺太が作るパンは町のみんなに大人気。最近そこにいっしょに住むようになった”父親違いの弟・まみ太”も手伝っている。今朝もまみ太はお駄賃がわりに焼きたてのクロワッサンをもらうと、その美味しさにたまらず『ポンッ』と触覚(?)を立ててしまう・・・。
実はまみ太は、このあいだ近くの山に落ちた”隕石”で地球に不時着した宇宙人だったのです👽
①巻のあとがきマンガを読むと、この場所にはモデルがあるみたいです。だとしたらすごく行ってみたい。。
登山鉄道とリフト、すごく気持ち良さそう。
このパン屋さんの建物(①巻の表紙)も、すごく素敵です。
紺太のパンの美味しさの秘密はこの古い建物にもあるそうで、酵母が住み着いているんでしょうね。醤油蔵みたいな感じでしょうか。もやしもん感。いいなあ。。
紺太の顔がすごく可愛いことが、すこし気にはなっていたものの、マンガだからと思ってました(スミマセン)。でもそれにもちゃんと理由があったんですね。笑った時の前歯がとても可愛い。とってもやさしい子(子?)です。
まみ太も宇宙人なのに(なのに??)すごく可愛いです。
まみ太の設定は、こどものころに宇宙人の特集を夢中で観ていた私にはクスリと笑えたところもあります。
見覚えのあるあのスーツ・・・👽
「もしかして中身は可愛い男の子だったのかも?! そーだったらいいな、そしたらこわくないのに・・・」などと真剣に考えます。
紺太がたったひとりで住む店舗兼住宅に、食べ物を探して迷い込んだまみ太。
あるアクシデントのあと、まみ太の話を聞いて、思わずひきとめてしまう紺太。
さみしがりやの紺太と感情の動きが乏しいまみ太がいっしょに暮らして、だんだんと化学反応みたいにおたがいやまわりが変わって行って。。。その様子が、おじいさん譲りのやさしいパンの香りのなかに描かれていて、飽きずに浸っていられます。
後輩たちやまみ太が通う学校の先生もすごくおとなでやさしくて、パン屋の常連さんにもほっとするー。。
ときどき思い出の中に出てくるおじいさんがだいすきです。いたずら好きなとことかも好き。こんなに魅力的なおじいさんがいなくなったら、さみしがりじゃなかったひとも、さみしがりになるかも。。。
いつかまみ太が帰ってしまう時、まみ太にも『さみしい』がわかるようになってるのかな。。
それにこんなにまみ太がいる日常が当たり前になって、紺太だいじょうぶかな。。。
そんな心配をしながら、成長を見守るような気持ちで読んでいましたが、最終巻の3巻で、ついに救助艇がきてしまいます。。
紺太といっしょに過ごす日々の中、人間のこころの機微に触れてきたまみ太は、以前ならためらいなく伝えただろう『自分がいなくなること』を、誰にも言えなくなっていました。
そして母星からの救助がやってきて…。
地球人の中のまみ太の記憶は消されてしまって…。
まみ太が見つけた人間らしさ、それを、まみ太自身が自分のものとしていたかどうか。。。ぜひ実際に読んでみてください。
おじいさんのいたずらが結ぶラストの展開が、たまらなく素敵でした…!
まみ太のこのはじめての表情。
これをなんて言葉で表現すればいいのか…。ただ胸がいっぱいになって、泣きました。
3巻は少し駆け足だったような感じもありますが、いろいろな人がいろいろな気持ちで生きているということを丁寧に描いているやさしい物語でした。
たべものが出てくるマンガはいますごくたくさんありますし、私も好きでよく読みますが、この不思議な物語は、その中でも特別になんども触れたい、暖かくいい気持ちの世界です。これからもずっと、何度も読み返したいと思います。
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