海鮮じゅるり👹『かくりよの宿飯四 あやかしお宿から攫われました。』

2018-08-18

友麻碧・著『かくりよの宿飯四 あやかしお宿から攫われました。』
KADOKAWA 富士見L文庫

かくりよの宿飯、シリーズ第4巻。

<あらすじ> 折尾屋に帰ることになった銀次を引き止めようと、乱丸の可愛がっているノブナガを人質(犬質?)にとって脅したまでは良かったが、そこにいた黄金童子の術にかけられ、葵は折尾屋の宙船に攫われてしまった。予想外の出来事に折尾屋の面々も戸惑うが、銀次を取り戻したい葵は折尾屋で奮闘することになり。

 

🦐 かくりよの宿飯3巻の感想

 

前巻までは比較的のんびりと進んでいたお話でしたが…、突然がーーーっといろんな要素が出てくるこの4巻!

続々登場する新キャラや、南の地の悲しい謂れ、秘められた儀式、そして松葉様と羽鳥さんの親子関係などなど。。。それプラス、葵と大旦那様のにやにや、葵の新しい眷属。。。。すごい情報量でした!

しかし、それはそれとして。敵ばかりの折尾屋においても、葵の武器はお料理なので。そして南の地は海産物の宝庫なので。天神屋にいる時とはまた違う種類の美味しそうなものがたっぷりで、今回もまたまた、読んでるとお腹が空く。。

今回出てきたお料理はちょっと書き出せないくらいいっぱいです…。

特に美味しそうだと思ったのは、イカシュウマイとカキフライ、明太もちチーズもんじゃ、ブリの漬け丼、梅肉チーズのサラダ巻きです。あとがきを読むと、このうち2つは友麻先生の大好物らしい。やっぱり好きだから描写にも熱がこもるのでしょうか…? でもほかのお料理もいままでとおなじでやぱり身近なものなので、味が想像できてしまい、読んでいるとお腹がくぅくぅ言い始めるのでした。。。ほんとうに美味しそうに描写されるので、つらい。

 

それと、ひさしぶりに観光みたいに南の地の市(いち)に出かけるエピソードがあって、そこがとても楽しかったです。

魚屋に化けて、すこし若く威圧感少なめの大旦那様にときめく葵。まあ、大旦那様は元々美形ですからね。それにこの頃はいつもすごく優しくて、お茶目な面が強調されているので、だんだん絆されていくのがよくわかる〜。

大旦那様が葵に対して示す優しさや包容力って、庇護者のそれのような感じがします。ときどきすごく甘えてもいるけど、まだ守ってやらなきゃいけないという気持ちの方が強いのかな。。。

市に売ってある海産物はどれも上等で、値段も安い! 葵が夕がおで従業員に出している朝御膳が1食500蓮だったので、真アジの干物の特上が170蓮というのはお値打ちではないでしょうか。

ほかに特産品として黒砂糖、柚子胡椒、養殖ブリなどが扱われているようでした。

 

ここは素朴な地なので、賑わいも穏やかそうです。落ち着いて買い物ができそうな雰囲気ですが、そんな中にも『貧しさ』が描かれています。南の地は呪われた地であり、そのために他の土地より発展が遅れているし、置いていかれた親のいない子どもたちも多い。一方で中央の妖都のような富める土地もあって…。

土地によっていろんな歴史があって、それがあやかしたちを自由にしたり不自由にしたりしていて、隠世という世界はそのバランスの中で成り立っている。

自由に生きてるようでいて、あやかしたちにもやっぱりいくらか耐え忍ぶべきものはあるんですよね…。

たぶん、人間と同じで、ほんとうに決めてしまえば、その土地や自分の役割を捨てることはできるのでしょう。でも、そこにいるとか、それをするって決めたのは自分だから、がんばる。

あやかしたちがなんとなく愛おしく感じられた4巻でした。

そういうこともですけど、今回も松葉様と羽鳥さんのこじれた親子ゲンカの行方も、当人たち同士の問題であると同時に、南の地の問題でもあって。情が深い分、にっちもさっちもいかない状態になっていて、どうするんだろう〜と思っていましたが。

ここでも人間の葵が、問題を解決するのです・・・そう、お料理で。

このパターンはだんだん定着してきたんですけど、人間よりも長い時を生きるあやかしに人間のような情があるとしたら…、こじれてしまったものを解くのは、きっと自分達だけでは無理だから。葵というマレビト/トリックスターが必要なんですよね。

とはいえ、葵は折尾屋でも天神屋で最初にそうだったように、あるいはそれ以上に憎まれたりいじわるもされます。でもあやかしを「そういうものだ」と捉えて根に持たず、彼らがこまったりお腹を空かせていると放って置けなかったり、それを恩に着せることもない、実にさっぱりとした良い性格。葵が問題を解決できるのは、もちろん抜群の霊力回復力を持つあやかし好みの味のお料理に追うところが大きいでしょうけど、葵のこういう性格ゆえという部分も大きいと思います。じめっとしたところが一切ない。

…もしかしたらそれは、そうじゃないとやってられなかったからなのかもしれないし、鬼よりも鬼のおじいちゃんと暮らすうちに身についたある種のドライさなのかもしれないけれど、じめじめした私には、なんとも爽やかな良い子だなーって思えます。

なぜ銀次さんが折尾屋に戻り、それを大旦那様があっさりと許したのか。そこに潜む南の地の秘密に、葵はどこまで切り込めるのか。実はこの件は5巻にまで続いていますので、やはり今から読み始めるという方は一気に揃えた方が良いでしょう。。

 

そうそう、今回は銀次さんの本当の姿も出てきます。本当の姿で空を駆けていく銀次さん、というシーンがあるのですが…。とっても綺麗っぽい。。見てみたいです。

綺麗といえば、今回はいっそう景色や建物が美しい場所があったように思いました。

まず、葵は今回折尾屋の本館ではなく雲の松原の中にある、旧館の寂れたお台所でお料理しています。その松原はとっても広く、朽ち果てたお社などもあるという。

海辺の防風として松を植えているところはけっこうあると思うのですが、私の住むところの海の方でも砂浜にたくさんの松が長い距離植えられています。あの白い砂と松林の取り合わせがとても好きなので、たぶんあれより何倍も広い砂浜の松林、そこにある古いお社、という舞台設定にとってもときめきました。行ってみたい…。

また、少々ネタバレになってしまうかもしれませんが、最後の方に出てくる竜宮城が素敵な感じです。…まあ、邪気が溜まっていて、人間は入れるけどあやかしには苦痛な場所らしいんですけども。人魚の鱗が埋め込まれた壁画とその鱗の美しさは見てみたいなあーと思うものでした。そこにかつて住んでいた人魚族も、すっごく綺麗だったろうなあ…。

 

次巻はいよいよ儀式の全てが執り行われます。葵はどんなお料理でおもてなしをするのでしょうか。最後の方でちょっといいムードで別れた大旦那様と葵の関係はすこしは進むのでしょうか。ますます目が離せません〜。