友麻碧・著『かくりよの宿飯 あやかしお宿で食事処はじめます。』
KADOKAWA 富士見L文庫
かくりよの宿飯、2巻です。
<あらすじ> 自分の意思で隠世に戻り、『鬼門の地』にある大旦那様のお宿・天神屋で食事処”夕がお”をはじめた葵。厨房の見習いダルマたちに嫌がらせを受けたり謎の忍に襲われたりといろいろありながらも、初日はお店の名付け親でもある天狗の松葉様の宴会で大にぎわい。しかし翌日からは閑古鳥が鳴き、1週間が経つ頃、無慈悲と噂のお帳場長・白沢(はくたく)の白夜に呼び出されてしまう。
- シリーズ第1巻の感想はこちらです🍙
『かくりよの宿飯』シリーズの感想一覧はこちらから
いよいよ、”夕がお”がはじまります〜🎉
冒頭から、簡単に想像できてしまう美味しそうなおにぎりがいっぱいで、たまりません・・・。暁が食べてたのが食べたいです!(甘辛い牛肉の細切れを白米で握ったおにぎり)
大旦那様に連れて行ってもらった銀天街で食べてるとり天も美味しそう。。
もちろん松葉様の宴会でのビュッフェもいい・・・!
そんな中に不穏な気配。
でも物語は一旦そこから離れます。
白夜さんは厳しいお帳場(宿で帳簿をつけ勘定するところ)長である上に、おじいちゃんには借金のことで恨みを持っていたために、もともと採算の取れない離れ(いまは”夕がお”)にことさら甘くないようで。
なんとか白夜さんに”夕がお”をつぶされないように頑張るのが今回のミッションのひとつです。・・・これは意外なところから解決して行くんですけどね。
冷血なお帳場長の白夜さんは理路整然と話しながら扇子をパシン、と手に打ちつけたり、要所でバッと開いて見せたり、なかなかの威圧感。責任を説くところが好き。
最初は分厚い壁に思えましたが。。。ひょんなことから知る意外な素顔がすごくチャーミングです。それを隠そうとして焦り怒るのがまたいいです。(キレキャラが好きな私。)
白夜さんだけでなく、新しいキャラもたくさん登場します。
特に好きなのは御庭番のカマイタチ・サスケくん。食べ方とか話し方、仕草も可愛すぎる。。餌付けしたい。。それでいて一流の忍び・・・。素敵。
あと、不思議な金髪のおかっぱ少女はちょっとしか出てこないけど、のちのち重要になってくるので、記憶にとどめておきましょう。
葵がおもてなしをすることになる妖都の縫ノ陰様と律子さん夫婦も印象的です。あやかしと人間の夫婦。律子さんが後日再訪して葵とおしゃべりするエピソードは、想像できる映像も涼やかで美しく、とても素敵です。
それと、今回もなんだか懐かしいような、でもたしかに怪しく奇妙な風俗ももちろんたっぷり楽しめます。
最初の方で行く鬼門の地の銀天街もごちゃごちゃして楽しそうですが、物語の最後の方で行く東の『海門の地』の異界珍味市の様子には特にワクワクします。隠世に建つ洋館、そのなかでは和装の妖たちが現世の珍味を品定めしている。。。デパートの物産展みたいだけど、お客さんも売り子もあやかしだから、もし安全だったらその様子をぼーっと見ているだけで楽しそう。
大旦那様や銀次さんとの触れ合いの中にすこしずつ顔を出すある符号も気になるところ。
大旦那様は相変わらず謎めいていますが、たまに出てくるとひたすらに優しい。何かを知っていて、でもそれを刺激したくなくて、やんわりと守ってくれてる感じ。
そして可愛い印象です。ガツガツと求めてはいないけど、葵がくれるどんなちいさなものもちゃんと拾う、というような。
それは読者にははっきりわかる大旦那様のこころなんだけど、葵にはまだ通じない。銀次さんにたまに嫉妬してるのもニヤニヤポイントです。
そんな銀次さんも『なにか』を前提に話をしてるな、ってところがあって。
この謎、気になって仕方がない。シリーズの最後に明かされそうだけど、終わるのはいやだし、でも知りたいし。。。悩ましいところです。
今作で出てくる特産物みたいなものは、星ヶ枝餅、お茶、金平糖、とり天(食火鷄)、生クリーム(乳製品)、それと食べ物ではないけど、南の地の鬼のお面、でしょうか。
それぞれどんなあやかしがどんなふうに作っているのか、興味深く読んでます。
手毬河童のチビはちょこちょこ出てきてはあざとさを見せつけていますが、葵を本当に心配してるというか、精神的に頼りにしてるんだなあと感じる場面もあったので、とても可愛くいじらしかったです。
まだまだつづく『かくりよの宿飯』。ちょっとした旅気分も味いつつ、美味しいご飯に飯テロされながらまだまだ楽しんでいきたいです。
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