ついに最終巻となりました、大好きなかくりよの宿飯。
でも、あとがきによりますと・・・。期待通り今後もちょっとしたスピンオフ作品が出そうでもう楽しみです
かくりよの宿飯のその後・第二弾の感想を書きました
イラストレーターのLaruhaさんの画集に掲載されていた大旦那さまと葵の夫婦感を感じられる本編後日談SSも収録されています。すごくよかった・・・(´>///<`)
このイラスト集はかくりよの表紙イラストが大きなサイズで収録されているほか、詳細なキャラ設定も載っていて、30ページほどがかくりよ関連みたいです。
友麻碧・著『かくりよの宿飯十 あやかしお宿に帰りましょう。』
KADOKAWA 富士見L文庫
いままで描かれてきたことがちょっとずつ出てくると、「ああ…懐かしいな…」と思いつつ、エンドロールみたいで寂しくもなりました。
この巻で全ての謎が全部解けた…というか、スッキリしたという感じは個人的にはなくて、たぶんこの巻までを読んでから、もう一度1巻から読み返すと、スッキリするのかもしれない、と思っています。
けっこう今まで読みながら「…ん?」という謎があって、でもいまはわからないしなーと放り投げていたことの伏線が回収されていると思うんです。
でも全体が長い物語だったり、途中で自分が違う本を読んだりしたことなどで、伏線そのものを忘れてたり、途中で明かされた謎などを忘れてしまってたりで、ちょっと残ってる「?」もあります。
とりあえず、今の理解度で感想を書いていこうと思います。
でも絶対、ここまで読んだら1巻から読み返すとなお楽しいと思いますぞ 通して読み返したら、また感想を書き換えるかもしれません。
(ところでこの巻の初版には誤変換や誤用がありました。読むときにちょっと混乱するかもしれません…)
銀次さん
銀次さんの想いは最後まで葵に伝わることはなかったですね。
でもそれが銀次さんの願いだったのでしょう。
大旦那様は銀次さんの気持ちを知っていたでしょうか。。。それが少し気になるところです。
でももし知っていても、隠したいと思っている彼の気持ちを尊重する大旦那様だろうと思います。
個人的に…銀次さんに対しての葵の想いは、大旦那様へのものよりも身近で体に染み込んでいるもののように感じました。
大旦那様のことは自分とは全く別の切り離された(謎の)存在として意識し続け、やがていないと寂しく感じるようになりました。信じていてもすぐに気持ちがわからなくなり、不安が強い。
でも銀次さんに対しては、家族的というか、自分自身とどこかで繋がっていて、離れていても存在を感じることができる。
おじいちゃんに対して感じるような、圧倒的な安定感を持って信頼していそう、といいますか。。。
銀次さんはずっと、自分の気持ちの引き際を覚悟して行動していましたね。
葵の大旦那様への気持ちが変化するのを見届けながら、つらいけれど、折り合いをつけたのでしょう。。。銀次さんにとっては結局、葵の気持ちが何よりも大切だから。
それはたぶん、あの食べ物を運んでいた頃からの染み付いた癖のようなものなのかもしれません。
かわいそうな子供に食べ物を運ぶように頼まれて、銀次さんは葵に出会い、哀れに思ったことでしょう。なんとか安心させてやりたい、守ってあげたい、助けてあげたいと、思ったことでしょう。
だから隠世にたったひとりでやってきた葵がひとりぼっちで奮闘する姿を見て、(こっそり大旦那様に頼まれたとしても)やっぱり同じように考えて行動していたはずです。だから葵は銀次さんをすっかり信頼して、安心しきっていたのです。
つまり…。不安定になる要素が一つもない…というか、安心させたい、力になりたい、という気持ちで一生懸命行動してきた結果、家族的なポジションにがっちりおさまってしまった…のかもしれないと思いました。
不安定さが一つもない銀次さん。
いつも安心させてくれて、絶対的な味方である銀次さん。
大旦那様が葵を「母性に溢れる」と表現して褒めるセリフがありますが、あれは全くその通りで、もしも銀次さんがもう少し不安定な人であったら、もうすこし助けてあげなければいけない部分を持っていたら、葵の気持ちも少しくらいは変わっていたのかも…とも思います。。。。
が!
そういう部分を山ほど持っていて葵の気持ちをかき乱す、そしてあんなことをしてまで助けてくれた大旦那様がいる限り、やっぱり恋の場面での他の人の出番はないのでしょうね。。。
大旦那様の閉じ込められている場所で、その身と引き換えに鍵を壊してくれた銀次さんの狐火。
銀次さんが語り手となっていた時に明かされた胸の内を知っているから、今回もいろいろな場所で示された献身的な愛情には、随所で泣かされました。
こんな銀次さんの長い時を一緒に生きてくれる人が、早く現れてくれるといいのですが…(できれば夕がお勤務が永遠に許されるような立場や性格の方だとなおよし…)。
おじいちゃん
第1巻の時からずっと、葵がおじいちゃんの死をそれほど悲しんでいないように感じていて、それはなぜなんだろうとずっと思っていました。鬼からも忌み嫌われるとか、そういうことじゃなくて、肉親としての複雑で生々しい悲しみがあまり感じられないというか。。
それはもしかしたら葵の性格なのか、それとも物語のテーマ的なものなのか・・・、と思っていましたが、それについても「だからかもしれない」というエピソードがここではじめて明かされました。
ああ・・・そうか・・・。
「おじいちゃん」は、こういう状況で突然にプッツリといなくなってしまったんですね。。
死に対して準備する期間はあったけれど、お別れの言葉を交わすこともなく、たぶん「おじいちゃんとして」死んだわけでもない。葵は人間らしいと言ったけど、史郎らしくはないですよね。
こういう状況だったから、人生最後の食事は葵の手料理じゃなかったんですね。
それがすごく不思議だったんです。どんな状況だろうと、最後の食事を食べさせてあげることはできるんじゃないかと思っていたので。
この顛末には謎が残ってスッキリはしませんが、葵としたらそのまま受け止めるしかないし、そういうことを考えている精神的な余裕もなかったでしょう。
大旦那様の姿を求めてたどり着いたあの場所で、葵はやっと、ほんとうのお別れができたのかもしれません。
おじいちゃんがあの姿だったのは依代が影響しているのかもしれないとも思いました。
つまり、私はあの史郎が葵のおじいちゃんになってからの実際の史郎だと勝手に感じています。
本文中には自分を未来の孫と理解して言葉をくれた、という一文がありますが。。。
私は、意図してあれに宿り、葵を導き、あの言葉の意味さえも最後に明かしてしあわせを祈ってくれた「おじいちゃん」の思念のようなものだと勝手に思っています。(ちょっとネタバレ反転→だからこそ、描写によれば “ひと型を保ったまま足元に落ちた依代” を拾わずに行った葵に「え…」と思ったりもしたのですが)
それとは別に、おじいちゃんが死んでからの葵の思考回路の幼さが少し気になりました。おじいちゃんの死を悼むというより、自分を哀れんでいるようで。
でもだからこそ葵はこどもの姿になってしまったのかもしれません。だってあの悲しみ方は、こどもの悲しみ方そのものだから。
葵はおじいちゃんと別れ、はじめての家族と別れ、この幼さをも卒業したのかな。。
あの史郎がなんであっても、しっかりとお別れを言えて、あんなふうに言祝いでもらったことはとても良かったですよね。。。
大旦那様救出のアレコレ
暁とお涼、それからアイちゃんもかなり頑張りましたね。
前に作ったお料理がまた出てきて、終わっちゃうなあ・・・としみじみしつつ。。。
しかし個人的に…各巻にひとりは「なんやこいつ」と思ってしまうキャラがいる「かくりよ」。
今回の「なんやこいつ」は、あの雷獣をも差し置いて、ブッチギリで葉澄さんですね。なぜかはくどくど書きませんが、読んだあなたなら多少はご理解いただけると思う!
みんなの頑張りがなんか報われないな〜と思っちゃったけど、思いも寄らない余録があったので、まあよしとしましょう。なんといっても多分この時のことがきっかけで、「いいコンビ・・・」と思っていたあの二人が後日くっつきましたから!
すごく嬉しかったです。
ついでに松葉様のこともここに書いてしまいます。
松葉様はいつも隠世のおじいちゃん的存在で、出てくるとほっとして大好きでした。最後の方で見送ってくれる松葉様を想像してじ〜〜〜んとしました。天狗は長生きだから、葵のいる間はお元気でいてくれると信じたいです。
そしてザクロさんは今回かなり可愛くなってる気がしませんか?!
あの特徴的な語尾も相まって、前に感じた通りのサッパリとした良い人。。。そして実にトンチの効いた人。。
葵にとって得がたい存在がまた一人増えましたね。
黄金童子は相変わらず謎めいていましたが、今回はまるで美味し◯ぼの海◯雄山的コメントが光っていました(四万十の鮎の時みたいだった…)。
やっぱり一から十まで手を貸すとかそういう感じではないけれど、見守っていてくれる感じがしました。
その後、大旦那様とは会ったんでしょうか。
いつかスピンアウトで二人の語らいなども覗き見てみたいものです。。
竹千代様が重要な役割を担ってくださったのも心強かったです。
お年の割に包容力があり、理知的な竹千代様。その御代には期待しかありません。。。が、葵の生きている間に即位することがあるでしょうか。。。
妖王様の立場もわからなくはないけど、自分だったらこうはしないかもなー雷獣が嫌いすぎるしーと思うので、やはり竹千代様の治世を待っちゃう・・・・ごめん、妖王様。
手毬河童のチビは今回もあざとさ満載で、場を和ませていましたね。緊張する場面でも一服の清涼剤、といった趣でした。
最初から最後までずっと、「葵しゃまのいるところにボクもいるでしゅ」と慕ってくれた気持ちには、時々ちょっと泣きそうなくらいハマってしまってた私なんです。
ほかにも、春日やカマイタチのみんな、南の地のみんな・・・いままでお世話になったひとたちがいろいろ出てきて大団円の最終巻でした。・・・ああ、ほんとうに最後なんだなあ・・・・。(のっぺらぼうの仲居3姉妹がハッキリ出てこなかったのは寂しかったな・・・)
大旦那様
大旦那様が葵にくれたアレと、それがもたらす効果・・・・。
以前予想したものの中に、近いものがありました。
この記事の、ここに書きました。(別のタブで開きます)「想像2」です。
大旦那様がここまでしてくれた理由も、今は完全に理解できました。
にしても、残酷すぎる犠牲の上に成り立った隠世の平和。。
禍々しい迷宮で、そこだけ清らかに咲く桜が美しく描写されればされるほど、そこに振るわれる力と込められた意図を感じて、なんだか逆に穢らわしくも思えてきます。
あんまりこのことは深く考えてはいけないような気がしました。たくましいあやかし、有象無象の世界だからこそ、成り立つ図式・・・と思っておきたいです。
それはさておき、大旦那様ですよ。
前半はまたも大旦那様不在で、彼のいるところへたどり着くために葵とみんなは力を合わせてがんばります。
やっとたどりついて大旦那様に会えても、本当の名前を呼んでも、気持ちをはっきり伝えても・・・・大旦那様はこっちへ来てもくれません。
後の方でもちょっと出てきますが、大旦那様ったら、最初に葵に拒絶されたことがけっこう深い心の傷になってるみたいなんですよね。。。困ったものだ。
葵は泣いて訴えながら、鍵に石を打ち付け続けます。
その様子に流石の大旦那様もやめさせようと近づいてくるものの、格子が二人を隔てていて。。。
大旦那様が葵に手を伸ばした時、銀次さんの愛情が奇跡を起こしたんですけどね。
そこからはなかなかにほのぼのとして、ニヤニヤする展開・・・。
大旦那様の性格のおかげで、シリアスで甘い、って感じではないのですが、こういうのが二人らしいかなとも思いました。
お弁当を渡して大旦那様の好物も食べてもらえましたし、そのおかげで力もかなり回復しましたし、ここから全部を裏返す気持ち良い展開です・・・・!
夜行会では大旦那様の秘密がいろいろてんこ盛り状態で「ああ〜〜〜なるほど!」連発でした。
たとえば、7巻の頃から気になっていた「大旦那様が鬼門の地に封じられていた理由」。
それがらみで、ついに大旦那様の秘密が、葵に食べさせたアレのことが、公になります。
先に書いた通り、大旦那様はそのためにいろいろと失いましたが・・・結果オーライですよね!
それのために雷獣の恐ろしい計画に意味がないことがハッキリして、人間とあやかしの夫婦につきものの悲劇も、少なくとも他の夫婦よりは、避けられたのですから!
史郎が招いた恐ろしい常世の王の呪いが完全に消えたということも、ハッキリ明言されましたし。・・たしかにあの強い呪いは、アレでしか相殺できないものでしょう。。
もうひとつ7巻から気になっていた「大旦那様が封印を解かれて天神屋を作ってからの鬼門の地の繁栄の謎」。これもここにつながるなんてねー! と感心しました。
これもまた懐かしい仲良し、静奈ちゃんと砂楽さんの研究の結晶、というのがとてもいいですよね。
特に砂楽博士にとっては、この研究をここまで極めることが人生においてとても意味があることだと思うので。。(大旦那様はああ言いましたけど、もちろん全ての鬼の意見ではないですし、罪の意識は一生拭い去れないでしょう。)
ここまでの丁寧なエピソードの積み上げがあるから、この綺麗な解決方法にもすんなり納得できました。今までのいろんなことがつながっていく感じ・・・。ほんとうに良かったです。
雷獣は最初また「こいつ!!!!」って感じだったんですけど、(そして妖王様にもイライラしたんですけど)、最後にはスッキリしました。
白夜さんとの関係には謎が多くて、誓いや決意ってなんだろう・・・? と思いましたが、それを知るためにまた付き合うのもアレなので、もういいかな・・・w いつか白夜さんの過去編みたいなのがあるときにでも、ちらっと知れればよし、です。
とにかく、万難を排して、ついに天神屋に帰れるようになった大旦那様。
天神屋一行を折尾屋の船が宴会しながら送ってくれたのも良かったですね。。。
天神屋の前で撮った写真をLaruhaさんのイラストで見てみたかったな。
全てが落ち着いてから、大旦那様が葵を隠世に連れてきたばかりの頃の話をしてくれたり、この先のために提案をしてくれたりするのもとっても良かったです。
大旦那様という拠り所を見つけたことで逆にちょっと不安定になり、何かと感情的になっている葵。
大旦那様はやはり多くのあやかしを引き取り天神屋で教育してきただけあって、葵のこれからや天神屋の未来や、そういうものを冷静に先読みしていてとっても頼り甲斐がありました!
最後の最後にやっと褒められて驚いている姿も可愛かったです。
長い長い時をかけて、やっと葵がお嫁さんに来てくれて、良かったね。。。としみじみしました。
かくりよの宿飯
結局「約束」というのは、どれのことだったのでしょう。
この物語にはたくさんの約束が出てきました。
葵と恩妖の約束、おじいちゃんと葵の約束、おじいちゃんと大旦那様の約束いくつか、おじいちゃんと妖王様の約束、葵と大旦那様の約束、ほかにも。。。
そのときどきに、指している約束が違うような気も、同じような気もしました。
でも写真の裏に書かれていた「果たされていない約束」は、借金のカタとしてではなかったけど、葵が大旦那様の嫁になる約束のことで間違いはないでしょう。
おじいちゃんが「鬼にだけは気をつけろ」と言っていた意味もハッキリしましたね。
それがどんなにロマンチックな意味だったことか! まったくおじいちゃんたら、さすがは恋多き男。
現世に大事なものを見出せなかった葵が、隠世で新しい家族や仲間を得て、生き生きと暮らしていく。。
そういう番外編がほんとうに本として発行されていくかどうかはちょっとわからないけれど、書いていくとは明言されていたので、それからの天神屋や隠世の世界をこれからも楽しみにしていたいと思います!
大旦那様との遠恋時代とか、結婚式とか、新婚生活とか、暁とお涼とか、読みたい物語はたくさんありますもんね(●´◒`●)
大好きだったので終わってしまって寂しいですけど、とても良い終わり方でしたし、もうすこし読めるみたいなので、それを楽しみに生きていきたいと思います。
そうそう、本書をご購入されましたら、「月替わりショートストーリー」を必ずチェックしましょう!
8月は「かくりよの宿飯」文庫の帯の見返しにURLとQRコードで「浅草鬼嫁」とのコラボ SSが読めます。大旦那様がちらっと出てきます。
公開期間は2019年の11月15日まで。
ちなみに、10月発売の「メイデーア転生物語1」を購入すると「かくりよの宿飯」SS、となっています。
コラボとなっていませんし、鬼嫁とちがって接点もないので、100%かくりよSSなんだと思います! 友麻先生のあとがきによると、
「葵ちゃんと大旦那様の(珍しく)甘いお話になると思います」
とのことですので、読みたくてたまりません!!!
ついでに9月は「浅草鬼嫁日記7」で「メイデーア」SSが読めるようです。
どれも公開期限は同じく2019年の11月15日までですので、忘れずにチェックしましょう。
大満足の大団円♡ しあわせなお話でした(●´◒`●)
ところで今回はまたいろいろな食べ物が出てきましたね。 “いちごスイーツビュッフェ” なんてガチすぎるイベントもありましたし。
個人的に生どら焼きを克明に想像しすぎて、目下空前の「生どらブーム」が巻き起こってるんですけど、どうしてくれるんですかwww
「はじまりのお弁当」や、夕がおの思い出の和風オムライスを大旦那様に食べてもらえたことも嬉しかったです。
ああ・・・レシピ本出して欲しかったんですけどね。。出ないかなあ。。。
食べ物の美味しそうな物語って、本当に楽しいですよね。
そしてかっこよくて可愛い大旦那様をはじめ魅力的な人がいっぱい出てきて、舞台は隠世で、ときどきちょっとピリッとする基本的には和やかなストーリーで、主人公の葵の性格がすごくよくて。。。
そんな「かくりよの宿飯」がほんとうに好きです。
ここまで感想を読んでくださったあなた、ありがとうございました。
また番外編があったら、感想を書きたいです。
そのときはまた読みにきてくださいね〜〜(●´◒`●)ノシ
続編の感想書きました
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